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 寄稿
 
                中三国語授業「日本の漢詩を読む」
      
                         近畿大学付属広島中学校福山校 国語教諭 藤田修司

 本校、近畿大学付属広島中学校福山校では、中学3年生より国語は「現代文」と「古典」に分かれ、そのおかげで古典分野については公立中学校よりも多くの教材に触れることができます。
そんな中で一学期、単元「漢文入門」として「中国の漢詩(李白・杜甫)」を扱ったのですが、漢文が日本の文化に大きな影響を与えてきたことを実感してもらうために、「日本の漢詩」についても単元後の発展学習として取り上げました。

 まずは生徒たちにもなじみがあり、興味を引けると考え、武田信玄や上杉謙信といった戦国武将の詠んだ漢詩を紹介し、そこからその両雄が激突した「川中島の戦い」を題材にした、頼山陽の「不識庵機山を撃つの図に題す」につなげるという展開を取ったのですが、この授業の本当の狙いは、そこから更につなげて、その頼山陽の師匠である菅茶山を紹介するところにありました。(図1)

 私学である本校には広く備後一円から(一部は岡山からも)生徒が通学しており、神辺地区出身の生徒たちは別として、「菅茶山」について「知っている」という生徒は残念ながらほとんどいないのが現実です(また中学の教科書や国語便覧にも登場していません)。

 ですが、江戸時代の日本を代表する漢詩人である「菅茶山」のことを、まして福山にある学校の生徒たちが習わないままで漢詩の学習を終えるというのは、ひどく勿体ないことだと思います。
そうした思いから、この機会をうまく活用して「菅茶山」の人となりや、作品について触れてもらいたいと考えたのです。

 先述したように、多くの生徒たちにとって「菅茶山」は初めて知る存在だったのですが、逆の見方をすれば、そんな人物がこの福山の地にいたという事実は生徒たちにとっては新鮮な驚きであったようで、頼山陽とのエピソードなども合わせ、生徒たちも大いに関心を示してくれました。

 ですが、そこはやはり中学生なので、紹介まではできても菅茶山の漢詩の良さまでを伝えるのは簡単ではありません。そんな中で大変役立ったのが、「茶山ポエム」や「茶山ポエム絵画」で、スライドでポエムと絵画を同時に写しながら鑑賞させることで、生徒たちも詩の描く内容やそこに込められた茶山の優しいまなざしを感じることができたようでした。(図2)

 とはいえ、「漢詩の良さ」はそうした内容面にあるだけでなく、それを「どのように表現しているか」が同じぐらい重要な要素となっています
。今回の授業はあくまで中学生向けの「導入」ということなので、残念ながらそこまでは触れられませんでしたが、またこの生徒たちが成長し、高校で改めて漢詩について学習する機会が来たときには、例えば代表作である「冬夜読書」などを、原文のままで味わわせてみたいと考えています。(図3)

(図1) 
(図2) 
(図3)